「アダルトチルドレン」は誤解されることも多い言葉です。
「大人(アダルト)」「子供(チルドレン)」という逆の意味で捉えられる言葉がつながっているために分かりにくく、「子供じみた大人」「大人になり切れない人」「未熟な成人」などと思われることもあります。
一見分かりにくいこの言葉は、どのように生まれてきたのでしょうか?
「アダルトチルドレン」とは?
アダルトチルドレンとは「機能不全家族で育ち成人した人々」のことです。
英語名(adult children)を略して単にACとも言われます。
元々はアルコール依存症の親に育てられて大人になった人(Adult Children of Alcoholics)のことを指しました。
その後、子供に対する過干渉、ネグレクト(育児放棄)、虐待など本来の家族機能が働いていない家族で育った人達にも同様の傾向が見られることが分かったため、現在では広く「機能不全家族で育ち成人した人々」(Adult Children of Dysfunctional Family)のことを指すようになってきたのです。
言葉が生まれた経緯
1970年代後半、アメリカのソーシャルワーカーであるクラウディア・ブラックは新たな仕事を得て、アルコール依存症の親元にいる子供向けの改善プログラムの開発に取り組もうとしていました。
そのため対象となる子供達を集めようとしましたが、当時彼女のクライアントは既に子育てを終えた大人が大半でした。
そこでクラウディアは考えました。
「現在子供ではないが、既に大人になった彼らにも子供時代がある。
彼らを”成人した子供”として対象に加えてみてはどうだろうか?」
そして年代ごとに対象を分けることにして、それぞれのグループに名前を付けたのです。
■ヤングチルドレン(young children)
■ティーンエイジチルドレン(teen-aged children)
そして成人した子供を表す
■アダルト・エイジド チルドレン(adult-aged children)でした。
そこからアダルトチルドレン(Adult Children)の言葉が生まれたのです。
「アダルトチルドレン」という言葉が及ぼした影響
言葉が生まれたキッカケは小さな思い付きでしたが、その後この言葉はクラウディアが出版した本に記載したことから一躍注目を浴びるようになりました。
当時アルコール依存症は家族の恥として他人に話すことをタブー視されていました。
また依存症家庭で育った子供への影響が大人になっても残り続けることは知られていなかったのです。
一見分かりにくいがインパクトのある「アダルトチルドレン」という言葉は、米国でアルコール依存症や機能不全家族で育った人達のケアに注目が集まる、大きな流れを生み出していったのです。