アダルトチルドレンと「未病」(未病サミット@箱根へ参加)

日本有数の温泉地である箱根。
ここで開催された国際シンポジウム「未病サミット」に参加しました。

一見関係無いように思われるかもしれませんが、「未病」の考え方はアダルトチルドレンの捉え方に通じるものがあるからです。

未病とは


「未病」とは健康と病気の間の状態を指す概念です。

この言葉を知らなかったとしても、日本人であれば「(漢字の通り)病気未満で健康でもない状態のことかな?」と想像つきやすいのですが、実は西洋医学にはあまり無い考え方なのです。
というのも、西洋医学では健康と病気を二律背反的に捉える傾向があります。(図1)

つまり、病気がなければ健康、健康でなければ病気というようにどちらかを絶対的に評価しがちです。
「病気」そのものを治療の対象と考える西洋医学では、病気と健康の間のどこかで線を引かないと治療を開始できないと考えるからです。

患者さんの症状に対して、診断の結果何も病名が付かなければ健康。何らかの病名がつけば、病名がついたことを起点に治療行為が始まるイメージです。

ところが東洋医学では、病気と健康は連続していて、病気でなくてもその健康状態は様々であると捉えていました。(図2)
健康の状態には高い状態から低い状態まであって、それが低下すると病気の状態に至るという連続的な見方をしています。

未病イメージ図
出典 神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部HP
http://www.pref.kanagawa.jp/div/0121/

「未病」概念を健康維持に役立てる

少子高齢化は日本だけでなく先進国に共通する課題です。
平均年齢が上がった社会では健康リスクも増えます。

多くの人々が健康でなければ、社会全体の活力が減退しかねません。

一方で「長く幸せに生きる」という観点からも健康状態を長く保つことは重要ですね。
最近は「人生100歳時代の生き方」といった本が売れていますが、以前に比べ長生きできる人が増える状況は、これまでにない豊かで新しい社会を作るチャンスにもなります。

そこで従来多くの人がとりがちな「病気になって初めて健康に向けた行動を起こす」のではなく、「普段から自分の健康状態をチェックし、心身の状態の改善・維持に取り組む」行動に変えて行こうという運動が推進されています。

ここで「未病」の概念が重要になるのです。

従来の「健康か病気か」と明確に分けるのではなく、心身の状態は健康と病気の間で常に連続し変化するものとして捉える。

そして「未病改善」とは心身の状態の変化の中で、特定の病気予防にとどまらず、心身をより健康な状態に近づけていこうというものです。

日本から「未病」の概念・取組みを広げる

「未病」や「未病改善」の概念を健康維持に役立てる考えは、当初は神奈川県の知事が県の高齢化対策の一環として進めていましたが、これが徐々に広がり、国の政策にも反映されるようになりました。

健康・医療戦略の一部見直し(2017年2月)
(国の)健康・医療戦略推進本部 HP
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai17/siryou1.pdf

また海外にも取り組みを広げるために、世界保健機構(WHO)とも連携を行っているそうで、シンポジウムにはWHOの戦略アドバイザーやハーバード大学の公衆医療分野の教授も参加していました。

英語には「未病」にあたる単語も無かったため、新たに「ME-BYO」という言葉も新たに作ったそうです。

アダルトチルドレンと未病

今回のシンポジウムの大きなテーマは未病の状態をランク分けで具体的に示す「未病の指標化」でした。
例えば個人それぞれの未病の状態を5段階や10段階に分けてランク分けができるようにしようとするものです。

「未病」概念の課題は程度が分かりにくいこと。
健康と病気の間で、一体自分はどこにいるのかが分かると改善への意欲も湧きやすいし、どの程度改善したかも分かりやすい。

アダルトチルドレンも同じところがありますね。
自分はどの程度アダルトチルドレンなのかの目安が分かれば改善しやすいし、改善した際の度合いも分かりやすい。(成果が分かりやすい、やりがいにつながる)

アダルトチルドレンの指標については「アダルトチルドレン セルフチェック」などの自己チェックのものが色々あります。
また当研究所でも連続セッションの効果の「視える化」のためにWHOの指標を使った心理テストを使用していますが、ACの状態をより的確に分かりやすく捉えるものはないか、新しく独自の指標を作るのであればどんなものが良いか模索していました。

今回のシンポジウムでは将来的に国際標準となる「未病の指標化」を目指していたので、参考になるものはないかと参加したのです。

未病改善のシステム構築
出典 ME-BYO未来戦略ビジョン(ME-BYOサミット神奈川実行委員会)
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/899590.pdf

参加した結果と今後


「未病の指標化」はまだ始まったばかりで、すぐに参考になるものはありませんでしたが、曖昧な心身の状態をどう「視える化」するのかは、アダルトチルドレンなどの心理的な側面の「視える化」と通じるものが多くあります。

アダルトチルドレンをもっと分かりやすくするために、今後も関連する分野のリサーチを続けていこうと思います。

 

 

 

 

 

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