健康診断で通常ではない値を示したものがありました。
精密検査を受けるよう案内が来たのですが、私はピンと来ていませんでした。
肉食を減らしたり食事を少しずつ見直した効果か、1年前に比べて体調はとても良いと感じていたからです。
「検査結果が間違っているんじゃない??」
そう思えるぐらいでした。
ただ結果は受け止め、精密検査を受けに行きました。
そこで見つかったのは胃のがんでした。
【1】がんが見つかって
国立がん研究センターによると、日本人男性の26%、日本人女性の16%はがんで死んでいます。
がんは日本人の死因としては最も多い。
また胃がんの患者が5年後、生存しているかどうかを示す生存率は約72%。(がんの進行程度(ステージⅠ~Ⅳ)トータル)
胃がんになった人が10人いれば、5年後3人は亡くなっていて、7人は生存していることになります。
*出典 国立がん研究センター「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」
今までちゃんと考えたことはなかったのですが、思ったより生存率は低いと思いました。
最初の診察は小さな診療所で受けました。
しかし、がんの進行度、他の臓器への転移など更に調べる必要があり、検査や手術設備の整った地域の拠点病院を行くことになりました。
検査データからすると、より重いがんが大腸にもある可能性があったのです。
昔と違ってがんは不治の病ではありませんし、治る可能性も十分ある。
しかし生存したとしても今と同じように健康に毎日を送れるか分からない。
死のリスクもある。
困ったことになりました。
「自分の人生はこのさき数十年続く、そうぼんやり思っていた。」
「でも、あと数年しかないかもしれない…」
などと考えるようになりました。
【2】危機に向き合えない
「この先どうなってしまうのか…」
仕事、お金など、先行きの不安もいろいろ出てきます。
感情的にだいぶ揺さぶられ、不安定な状態になりました。
「なんとかなるんじゃないか」と楽観的に思えたり、すごく悲観したり。
また将来が見えなくなった感じがして、人生のいろんなことを諦めたくなったり…。
「危機を目の前にした時、人はなんとかそれを乗り越えようとする。」
「死の危険が本当に迫ったら、人は全力でそれを回避しようとする。」
私はどこか漠然とそう考えていました。
でも私はそうではなかった。
いつの間にか、目の前の危機から目をそらしたり、スルーしてしまう。
お酒を飲む量が増えたり、YouTubeを見て数時間ダラダラ過ごすこともありました。
そして危機になかなか向き合えない自分のことを「情けないな~」と思うようになっていたのです。
【3】覚悟を決める
そうしているうちに、大腸検査の結果を病院に聞きにいく日が近づいてきました。
大腸がんの5年生存率は約73%でした。(がんの進行程度(ステージⅠ~Ⅳ)トータル)
「胃がんだけでもマズいのに、大腸がんまであると相当マズい…。」
私は追い詰められました。
物事が手に付きにくくなり、仕事も後手に回りやすくなりました。
PCには未読のメールがたまり、身の回りや自分の部屋も整理されず乱雑になってきたのです。
しかし混沌とした状態に陥っていた時、ふと開き直りの想いも出てきました。
「もう、なってしまったものは、受け止めるしかない。」
「もし自分の命があと数年だったとしてもいい。今の自分がやれること、ともかくやりきろう。」
そう覚悟を決めるようになりました。
すると今までとは違う意識状態が現れてきたのです。
ぼんやりしていた自分自身の意識がすごく明瞭でクリアになりました。
視覚がハッキリし、見慣れた生活場面を見る時の感覚も変わりました。
どこか「見えている」受け身の状態から、「自分から見に行く」主体的な状態に変わったのです。
頭の回転も速くなった感じです。
次に病院に行った時、胃がんに加え、大腸がんであることが分かったら
「すぐに〇〇さんに相談し、〇〇さんに協力をお願いする。」
「両親や兄弟には現状を伝えて、仕事ではこう動く…。」
といった、次の行動がすぐに頭に浮かぶようになりました。
そして滞りがちになっていた普段の雑事も処理が進み、部屋の整理整頓・清掃状態も上がりました。
まるで意識の変化と自分の周りの状態がリンクして変わったかのようです。
これは今までに経験したことがない意識状態でした。
危機を受け入れ、本当に覚悟を決めたことで「意識がクリアで、五感が鋭く、自然と力が湧く。」状態になったように思います。
この時は一種の「覚醒状態」だったのかもしれません。
【4】拍子抜け、少しの安堵
覚悟を決めて病院に結果を聞きにいきました。
結局、大腸にはがんは見つからず、引き続き他の臓器への転移などを調べることになりました。
私は拍子抜けしました。
でも良かった。
その後検査を進めた結果、他の臓器への転移もなく、胃がんも早期のものであることがハッキリしました。
早期であれば統計的にも生存率は高くなります。早期胃がんの患者が5年後に生きている確率は約95%になるのです。(がんの進行程度 ステージⅠ)
【5】その後の意識状態
大腸がんがないことが分かって緊張が一気に抜けた後、「意識が明瞭でクリアな状態」は出なくなりました。
状況に流されるままだと、 危機から目をそらしたり、スルーしたりしがちです。
でもしっかりと「生きること」に意識を向けると、がんが見つかる前よりも「意識が明瞭でクリアな状態」に近づける感じがします。
幼少期のトラウマが多いと「今を生きること」が難しくなると言われます。
過去の出来事にいつまでも意識を取られたり、まだ見ぬ未来を過剰に心配したり。
そして、生きることに惰性的だったり、安易に死に逃げ込みたくなったりすることもあるでしょう。
程度の差はあれ、多くの人が生きることを本気で決めきらないまま、生きているのかもしれません。
私自身はそうでした。
でもがんが見つかって、それを受け入れ・覚悟を決めた時、「生きることを決める」状態に近づき、意識の大きな変化が起こったのかもしれません。
【6】外科手術を恐れるトラウマ体験
私は「がん検査・診断」の段階から次の「がん治療」の段階に入ることになりました。
幸い早期のがんだったため、身体への負担が少ない内視鏡を使った手術(内視鏡治療)を受けます。
しかしまだ予断を許さない状況で、がんの大きさ・深さによっては取り切れない可能性がありました。
その場合は追加の処置が必要になり、身体への負担が大きい開腹・胃切除の手術(お腹を切って、胃を切り取る)を受けることになります。
私が強く恐れていたのは胃の外科手術でした。
私は16才(高校1年生)の時に胃の三分の二を切除する手術を受けたことがあります。
その時に苦しい体験が呼び起こされ
「同じ手術を再び受けたら、死ぬんじゃないか」
と強い恐怖心が出てくるのです。
その時の病気の大きな原因は「親を憎しみ、恨む」思いでした。
*関連記事「がんが見つかって」
②「親を憎しみ、恨む」ことで胃に穴をあけてしまった過去
https://ac-recovery-lab.com/?p=5385
*出典・参考
・国立がん研究センター がん対策情報センター
https://www.ncc.go.jp/jp/cis/
・がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計(国立がん研究センター)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_surv.html